19,800円のガシャポン、という衝撃
ガチャガチャの値段を聞かれて「19,800円です」と答えたら、たいていの人は二度聞きする。でもこれは事実で、バンダイのガシャポンオンラインで受注販売された「いきもの大図鑑アルティメット オオヨロイトカゲ」は、税込19,800円という価格設定だ。
300円のカプセルトイを毎週回し続けている身からすると、19,800円という数字は異次元に見える。でも内容を知ってしまうと、これが妥当かもしれないと思えてくる。それくらい、この商品は突き抜けている。
オオヨロイトカゲとはどんな生き物か
南アフリカに生息する大型のトカゲで、絶滅危惧種に指定されており、個人での飼育は困難な品種だ。全身をトゲのようなウロコで覆われた、見た目のインパクトが強い爬虫類で、その名の通り鎧をまとったような外観を持つ。
飼えない、触れない、見ることすら難しい生き物をフィギュアとして手元に置く。それがいきもの大図鑑アルティメットシリーズのコンセプトであり、オオヨロイトカゲはそのコンセプトが最も尖った形で表現された商品だ。
商品スペックの詳細
1/1スケールの実物大、全長約38cm
いきもの大図鑑の最上級モデル、アルティメットシリーズにてオオヨロイトカゲの完全再現に挑んだ商品で、標本をCTスキャンすることで外観を完全に再現した。全長約380mmの身体のウロコに沿って分割し、全身に57箇所の可動部分を仕込むことで本物さながらのポーズを取らせることができる。
全長約38cmというのは、生体の実寸に近いスケールだ。ガシャポンのフィギュアと聞いて思い浮かべるサイズとは完全に別物で、棚に置けばそれだけで存在感が部屋を支配する。
CTスキャンから始まった開発
開発にあたり実際の標本を手に入れることができたことと、ナイルワニをはじめとしてこれまで爬虫類の可動フィギュアをたくさん開発してきたノウハウが蓄積されており、爬虫類らしく動く可動構造はどうすべきかの技術を総動員して開発が進んだ。
標本のCTスキャンデータを使ってウロコ1枚1枚の形状を3Dデータで再現するという工程は、玩具メーカーの仕事の範疇を超えた精度だ。
トゲの再現で直面した難題
全身のトゲの形状を出来る限り正確に再現することにこだわった。特に脚に関してはトゲの形状をそのまま再現するため、形状に合わせてかなり分割をしており、後脚の脛(スネ)に当たる部分は棘の形状をキープするために5分割され、彩色が終わった後に1つのパーツに組み上げる工程が採られた。
脛部分を5分割して後から組み上げる、というのはプラモデルの世界でも特殊な工程だ。それをガシャポンのフィギュアでやっている。
開発途中、標本と見比べたところ、実際のオオヨロイトカゲは大きく体を曲げるとウロコの付け根とその先の柔らかい皮膚部分まで見えるが、モデルの方は曲げた際に隙間が出ないようにウロコを伸ばしていたため、曲げた際にウロコ形状が異なってしまっていることに気づき、全身のウロコの形状とディテールをすべてやり直すことになった。3Dデータにてウロコ1枚1枚の形状が正しいかを標本と見比べて修正していった。
「全部やり直す」という判断が開発の途中で行われたということは、完成品に妥協がないということの裏返しだ。
2年近くかかった開発期間
初めてブログでオオヨロイトカゲの開発を報告したのが2023年の9月で、受注開始が2025年6月25日だったため、それから2年近くも開発に時間がかかった。
通常のガシャポン商品が数か月単位で開発・発売されていく中で、2年というのは異例の長さだ。それだけこの商品に込められた熱量が大きかったということが、数字から伝わってくる。
受注方法と入手経路
いきもの大図鑑アルティメット オオヨロイトカゲはガシャポンオンライン販売アイテムで、受注中・11月下旬発送予定という形で展開された。
ガシャポンオンライン、正確にはナムコパークスオンラインストアでの受注販売という形をとっており、街中の筐体からは出てこない。「ガシャポンを回す権利を購入する」というオンライン形式の仕組みになっている。
19,800円という価格は、通常のカプセルトイ市場の常識とは完全に別の話だ。ガシャポンの名前はついているが、実質的にはプレミアムフィギュアとして位置づけてよい。
いきもの大図鑑シリーズの全体像
アルティメットシリーズは、バンダイいきもの大図鑑の最上位ラインだ。ナイルワニに続くシリーズで、大型爬虫類を1/1スケールで立体化するという路線を継続している。
通常のいきもの大図鑑シリーズは500円でカプセルトイとして展開されており、クワガタや爬虫類などを可動フィギュアとして楽しめる。オオヨロイトカゲも当初カプセルトイとしての商品化が検討されたが、1/1スケールで制作されており、口の中の構造や鱗の形状といった詳細まで再現されている。カプセルに収めることよりも完全な再現を優先した結果、アルティメットという別ルートに落ち着いた。
いきもの大図鑑レプティシリーズの500円商品と、アルティメットの19,800円商品が同じブランドの中に共存しているのは、ガチャガチャという文化が価格帯の幅を大きく広げてきた現状を象徴している。
19,800円を出す価値があるかという問いに対して
ガチャガチャを毎週巡っている身として、この価格に対して素直に思うことを書く。
300円のカプセルトイと19,800円のアルティメットフィギュアは、同じガシャポンというブランドの名前がついていても、入り口も楽しみ方も別物だ。300円は「何が出るかわからないワクワク」が中心で、19,800円は「絶対にこれが手に入る、そしてこの完成度で届く」という確信の上に成り立つ購買だ。
オオヨロイトカゲという絶滅危惧種を、CTスキャンした標本データから57箇所の可動を持つ1/1スケールで再現したフィギュアが19,800円。爬虫類好きや生き物フィギュアのコレクターにとっては、それが安いかどうかという以前に「他に選択肢がない」という商品だ。飼えない生き物を手元に置く唯一の手段として、この価格は成立する。
ガシャポンという名前がついたものを19,800円で買う、という行為に違和感を覚えるかどうかは、この商品の中身を知ってからでいい。知った後でも違和感が残るなら、それはこの商品のターゲット外だというだけだ。でも知った後に「それなら納得できる」と思えるなら、ガシャポンオンラインの在庫状況を確認する価値はある。

