赤べこがカラフルになったとき、何かが解放された
ガチャガチャの棚に透明でキラキラした牛の形のマスコットが並んでいる。赤べこの形をしているのは間違いないのに、色が赤ではない。水色があり、黄色があり、ピンクがあり、紫がある。光に当てると宝石みたいに反射する。
「赤べこって赤じゃないといけないのか」と考え始めると、面白いことに気づく。赤べこの「赤」は疫病除けの魔除け色として選ばれた色で、形と動きこそが本質だ。首がゆらゆら揺れる、あの独特の牛の姿。その姿がカラフルになったとき、郷土玩具としての赤べこは新しい楽しみ方を見つけた。
三洋堂から発売された「カラフルべこ〜ず宝石マスコット」は福島県会津若松市の郷土玩具「赤べこ」を透明なマスコットにしたもので、全10種類がラインナップされる。約4.5cmのサイズで、ころんとしたかわいらしいデザインになっており、透明なボディは光にかざすとキラキラと反射し、まるで宝石のような美しさを持つ。2024年7月8日から1回200円(税込)で順次発売された。
赤べことはどんな郷土玩具か
福島県会津若松市を代表する郷土玩具が赤べこだ。べことは会津地方の方言で牛を意味し、赤い色で張り子(はりこ)細工として作られた首振り人形だ。首が振り子になっていてゆらゆらと揺れる構造が特徴で、古くから厄除け・開運の縁起物として親しまれてきた。
伝説によると、柳津虚空蔵尊(やないづこくうぞうそん)の建立にあたり赤い牛が力仕事を手伝ったという言い伝えや、疫病が流行した際に赤い牛を持っていると疫病にかからなかったという説など、複数の起源話がある。いずれも「赤い牛は守ってくれる」という信仰が核心にある。
その赤べこがガチャガチャの世界に来たとき、形と首振りという本質はそのままに、色だけが自由になった。
カラフルべこ〜ず宝石マスコットの全10種
全10種という構成はカラーバリエーション10色という意味で、一つひとつが異なる色で光を反射する。透明な素材を選んだことで、単純な色の違いではなくガラス細工のような深みが出ている。
べこーず(べこーず宝石マスコット)は全10色セットで展開されており、体の側面には通常の丸柄のかわりにそれぞれのお花柄が入っている。尻尾もお花の形で、触ると思ったより揺れる仕様になっている。
尻尾がお花の形で揺れるという仕様は、赤べこの首振りという動きの遺伝子をしっぽに受け継いでいる設計だと思う。赤べこは首が揺れる。カラフルべこ〜ずはしっぽが揺れる。動くという本質が別の形で継承されている。
ぷかぷかカラフルべこ〜ず:縁日・イベント展開
「ぷかぷかカラフルべこ〜ず」は50個セットDP付きのカプセル入り商品として展開されており、縁日・イベント・お祭り・子供会などの用途に向けた業務用展開がされている。
縁日という文脈があかべこと非常に相性がいい。赤べこはもともと祭りや市(いち)で売られてきた玩具だ。ガチャガチャという現代の縁日感覚とあかべこというオリジナルの縁日玩具が、カラフルという共通言語で結びついている展開は、自然な流れに見える。
べこのめじるしアクセサリーという展開
カラフルべこのめじるしアクセサリーとして、パスケースシリーズとの連動商品も展開されており、あかべこをモチーフにしたアクセサリーとして持ち歩けるタイプのグッズも存在する。
めじるしアクセサリーという形はバンダイが多くのIPで展開してきたシリーズだが、郷土玩具をめじるしアクセサリーにするという発想は比較的珍しい。地域の伝統工芸品が現代のカプセルトイと交差するとき、その商品は「知っている人には深く刺さり、知らない人には新しいものとして届く」という二層の受け取られ方をする。
赤べこ系ガチャガチャの広がり
カラフルべこ〜ずシリーズ以外にも、赤べこをモチーフにしたカプセルトイは複数展開されている。
Qualiaの「神獣ベコたち 東の神々編」はガチャガチャで展開された赤べこフィギュアシリーズで、神獣としての赤べこという視点でアレンジされた商品だ。
神獣ベコという切り口は、赤べこが持つ霊的な力の伝説を現代のガチャガチャデザインに昇華させた例だ。カラフルで宝石のような方向と、神獣として格を上げる方向という、二つのアプローチがどちらも赤べこの異なる側面を引き出している。
開運赤べこ ぬいぐるみボールチェーンは全4種セットで展開されており、ふわふわした素材感のぬいぐるみとして赤べこを手元に置ける商品だ。
200円という価格と全10種という構成の意味
カラフルべこ〜ず宝石マスコットが1回200円という価格を維持しているのは、この商品が持つ「誰でも気軽に回せる」というコンセプトと一致している。10種全部揃えても2,000円という計算になるが、ランダムのため実際には倍近くかかる可能性もある。
200円という価格帯はガチャガチャ市場の中では廉価な部類だ。子どもが自分のお小遣いで回せる、お土産として気軽に選べる、縁日で渡せるという複数の使われ方を同時に成立させる価格設定だ。
全10種という色のバリエーションは、コンプリートを目指す動線を作りながら、1種でも手に入れれば十分に楽しめるという単品完結性も持つ。赤べこという形の普遍的な可愛さが、どの色でも成立する理由になっている。
郷土玩具とガチャガチャが出会う場所
日本の郷土玩具が現代のカプセルトイとして再解釈される動きをじっと見てきた。けこべこだけでなく、こけし、招き猫、だるま、ごま豆腐型の小道具など、各地の伝統工芸品がガチャガチャに入り込んでくる流れがある。
その中でカラフルべこ〜ずが面白いのは、赤べこという存在をそのまま縮小したのではなく、「カラフル」と「宝石のような透明感」という現代の美意識を加えて再設計したからだ。
会津若松に行ったことがある人間が手に取れば、あの地域の記憶と繋がる。行ったことがない人間が手に取れば、「どこの郷土玩具か」と調べるきっかけになる。ガチャガチャが地域文化への入り口になるとしたら、それはこういう商品の存在によってだ。

