ライチとドリアンがゾンビになる、という発想
ガチャガチャの棚に「FRUITS ZOMBIE 2」というポップが見えた瞬間、第1弾を知っている人間は笑いと期待が同時に来る。初代でイチゴ、バナナ、ぶどうがゾンビになったあのシリーズが、今度はライチとドリアンを引き連れて帰ってきた。
フルーツをゾンビにするという発想は、言葉にすると簡単に聞こえるが、実際の造形を見ると「ここまでやるか」という密度がある。フルーツの形状、色、テクスチャーを残しながら、腐って歩き出したような表情と四肢が加わる。キモかわという言葉がこれほどピタリと当てはまるガチャガチャは多くない。
パンダの穴とフルーツゾンビの来歴
2013年に誕生したタカラトミーアーツのガチャブランド「パンダの穴」は、大人向けガチャガチャのカテゴリで一種のサブカルチャー的な面を生み出したブランドだ。家電量販店はもちろん、ヴィレッジバンガードでも取り扱いが増えてきた。
パンダの穴は「怖い」「グロテスク」「シュール」という要素をかわいさに変換する独特の設計で継続的なファン層を持つブランドだ。フルーツゾンビはそのシリーズの中でも特に広く知られた商品で、
フルーツゾンビは価格200円でサイズ5〜8cm、企画・デザインは徳井伸哉が担当している。
徳井伸哉というデザイナーの名前がクレジットされているのがパンダの穴シリーズの特徴で、作家性のある商品として位置づけられている。ガチャガチャに設計者の名前がある、というのは珍しいことで、そのことがこのシリーズのサブカル的な評価につながっている。
フルーツゾンビ第1弾のラインナップ
第1弾のラインナップは全6種でNASHI(梨)、SAKURANBO(さくらんぼ)、PAINAPPURU(パイナップル)、ICHIGO(いちご)、BANANA(バナナ)、BUDOU(ぶどう)だ。
この6種の選定が絶妙だ。身近なフルーツから、パイナップルという少し南国的なものまで。イチゴの赤、バナナの黄色、ぶどうの紫という色のバリエーションも視覚的な多様性を作っている。ゾンビになっても元のフルーツが何かが一瞬でわかる、という造形の明快さがこのシリーズの強みだ。
フルーツゾンビ2の全6種
フルーツゾンビ2のラインナップはRAICHI(ライチ)、LEMON(レモン)、MOMO(モモ)、RINGO(リンゴ)、MELON(メロン)、DORIAN(ドリアン)の全6種だ。
RAICHI(ライチ)
ライチは中国南部原産のフルーツで、白くつるんとした果肉と荔枝色の外皮を持つ。あのつるつるとした表面がゾンビになるとどうなるか。半分腐りかけた状態の荔枝色が残りながら、細い手足が生えている造形は、第1弾にはない異国感を持つ。
LEMON(レモン)
レモンのシャープな形状とゾンビの不安定な動きの組み合わせは、果物の中でも特に造形の面白さが出やすい種類だ。黄色という色が持つ明るさと、ゾンビというモチーフの暗さのコントラストが際立つ。
MOMO(モモ)
モモ(桃)のふっくらとした形状がゾンビになることで、どこか愛嬌が出る。薄いピンクから深いピンクへのグラデーションと、腐った質感の組み合わせが2弾の中でも特にキモかわの均衡点に近い種だ。
RINGO(リンゴ)
リンゴは第1弾に入っていなかったことが意外なほど定番のフルーツだ。赤いリンゴの形とゾンビの顔という組み合わせは、キャラクターとしての認識しやすさが高い。コレクターの間では入手希望者が多い種だという評価がある。
MELON(メロン)
メロンのネット状の模様がゾンビの肌のテクスチャーと重なる、という設計の妙がある。緑の外皮と橙の果肉という2色構造が、腐食の進んだ状態として表現されたとき、独特のリアリティが出る。
DORIAN(ドリアン)
ドリアンはフルーツゾンビ2でのもっとも個性的なラインナップ選択だ。
ドリアンはトゲのある外皮と強烈な匂いで知られるフルーツで、その見た目が最初からゾンビに近い。トゲが武器のようになり、独特の匂いが腐敗臭と混ざり合うという想像が、造形に反映されている。第1弾と2弾を通じて、もっともインパクトの強い種の一つだ。
フルーツゾンビMIX:1弾と2弾が合体した2025年版
2025年5月、パンダの穴シリーズ第96弾として「フルーツゾンビMIX」が発売された。価格は300円(税込)で全12種。第1弾と第2弾で登場した全キャラクターがまとめてラインナップされた商品だ。
全12種という構成で1弾と2弾を一気に揃えられる設計は、初めてフルーツゾンビに触れる人への入門編として機能している。初代のイチゴとバナナ、2弾のドリアンとライチが同じ筐体に入っているという状況は、コンプリートしたくなる設計として優れている。300円という価格でMIXが展開されたのは、初代・2弾の価格帯(200円)から見ての値上がりだが、フルーツゾンビというIPへの需要が続いていることを示している。
入手方法:中古市場の現状
フルーツゾンビ2は発売から時間が経過しており、現在の通常筐体での入手は難しい。フリマアプリやYahoo!ショッピングでの取り扱いが主な入手経路だ。
フルーツゾンビ2の全6種セットはフリマ・通販で流通しており、単品でもレモンや各種が出品されている。
フルコンプセットをまとめて買う方が個別に集めるより手間がかからない。ドリアンとリンゴはやや需要が高く、単品での値段が他の種より上振れることがある。
フルーツゾンビMIX(2025年5月発売)は比較的新しい商品のため、フリマでの流通が安定している。12種すべてを300円の新品として入手したい場合は、発売直後にタカラトミーアーツ取り扱い店舗を確認するのが確実だ。
パンダの穴というブランドへの愛着
ガチャガチャを毎週巡りながら、パンダの穴のコーナーを見つけるたびに「今回は何が来たか」と立ち止まる習慣が自然に身についた。第96弾までシリーズが続いているということは、このブランドが持つ「大人向けサブカルチャーのガチャガチャ」というポジションが10年以上機能し続けているということだ。
フルーツゾンビは2弾、3弾、MIXと展開を続け、2013年から続くシリーズの中でもロングラン人気を保っている数少ない商品だ。フルーツとゾンビという組み合わせの強度が、繰り返しの展開に耐えている。
ドリアンのゾンビを手に取ったとき、「このトゲはもともとドリアンのものか、ゾンビになって生えたものか」という問いが浮かんだ。どちらでも成立する造形になっている。それがフルーツゾンビという商品の精度の高さだと思う。
